【管理栄養士監修】薄毛は多くの人にとって心配な問題です。遺伝やホルモンバランスの乱れ、ストレスなど、薄毛に影響を及ぼす要因はさまざまです。しかし、そこに食事という要素もあるのをご存知でしょうか?本記事では、薄毛に効果的な食べ物や避けたい食べ物について解説します。
薄毛に影響を及ぼす要因

薄毛の原因は個人によって異なりますが、主な要因として遺伝、ホルモンバランスの乱れ、ストレス、そして生活習慣が挙げられます。これらの要因は、毛包や頭皮の健康に影響を与え、薄毛の進行を促進する可能性があります。
1. 遺伝
遺伝的な要因は薄毛の主な原因の一つです。ホルモンバランスといった体質も遺伝するため、家族に薄毛の人がいる場合は自身も薄毛になるリスクが高いこともあります。
また、とくに父親の遺伝的要因が影響を及ぼすことが多いといわれているのも事実です。
2. ホルモンバランスの乱れ
ホルモンのバランスが崩れることは、脱毛の一つの原因です。
例えば男性ホルモンであるテストステロンが多く分泌される場合、結果的に髪が抜けやすくなることがあります。これについては後ほど詳しく解説します。
3. ストレス
ストレスは薄毛の原因として関連性が指摘されています。
長期間の精神的なストレスにより、自律神経やホルモンバランスが乱れたり、血流が悪く体内への栄養供給が不十分になった場合、脱毛が進行する可能性があるでしょう。
4. 喫煙
男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)の増加は、直接的に抜け毛に作用するわけではありませんが、抜け毛のリスク要因の一つ。
このDHTは喫煙により増加し非喫煙者と比較すると体内のDHTが14%も多くなるというデータがあります(※8)。
また喫煙により血液循環が悪化すると、頭皮への栄養素供給が足りなかったり、正常なターンオーバーに影響をきたしたりすることも、喫煙が薄毛を促進する理由です。
5. 過剰なアルコール摂取
過度のアルコール摂取は血液循環を悪化させ、頭皮の健康を損なうことがあります。不規則な食生活や睡眠不足も薄毛に影響を及ぼす要因です。
普段からアルコールの摂取が多い場合は、適度な飲酒を心がけましょう。
6. 高コレステロール血症 / 血流の悪い状態
健康的な髪を生やすには、頭皮や身体全体へ正常な栄養供給が必須です。
血中の悪玉コレステロールが通常より多い状態(高コレステロール血症)や、血中の中性脂肪が多い状態だと血液はドロドロの状態で流れが悪くなります。
血流が悪くなり全身への栄養供給がスムーズでなくなることは、髪の形成のための栄養が不十分となる要因です。
薄毛の予防・改善で意識したい栄養素と食べ物

健康な髪を育てるためには、適切な食事が欠かせません。栄養豊富な食品を摂取することで、髪の成長に必要な栄養素を十分に取り入れることができます。また、食事によって頭皮の健康を保つことも重要です。
薄毛対策で重要なことはバランスよく食べることですが、とくに以下の栄養素を意識してみるとよいでしょう。
1. タンパク質
髪を構成している成分のほとんどはタンパク質です。とくに「ケラチン」というタンパク質が大部分を占めています(※1)。
そのためタンパク質の摂取不足は健康的な髪作りの大敵。肉や魚、大豆などのタンパク質豊富な食品を積極的に摂取しましょう。
ケラチンは数々のアミノ酸の結合で作られていますが、その中でも多いのが「シスチン」というアミノ酸(※2)。
シスチンは髪の毛母細胞(毛母細胞の細胞分裂の繰り返しが毛髪の成長につながる)の増殖に関与しているという研究データもあります(※3)。
シスチンは「メチオニン」というアミノ酸からも体内で合成されますが、メチオニンは体内で合成されないため食事から摂取することが必須です。
多く含む食べ物 | シスチン:肉、魚、卵、大豆 メチオニン:肉、魚、卵、大豆、牛乳、チーズ |
2. コラーゲン
コラーゲンもタンパク質の1種で、細胞と細胞のつなぎとなる役目を全身でになっています。頭皮でもその役割は変わらず、健康的な頭皮にはコラーゲンが必要。
コラーゲンとして摂取すると一度は分解されますが、再び体内でコラーゲンとなる材料となるため積極的なコラーゲン摂取は無駄な努力ではありません。
コラーゲンが髪を太くするという研究結果もあり、女性だけでなく男性も意識して摂取するとよいでしょう。
多く含む食べ物 | 豚肉、ゼラチン、フカヒレ、牛すじ |
3. ビタミンC
ビタミンCは、丈夫な構造のコラーゲンを作るために必要です。
先ほどコラーゲンはたんぱく質の一種であると説明しました。たんぱく質は複数のアミノ酸の連結で構成されており、コラーゲン特有のアミノ酸として「ヒドロキシプロリン」というアミノ酸がありますが、このアミノ酸の生成にはビタミンCが必要です(※4)。
ビタミンCが不足しヒドロキシプロリンが形成できないと、コラーゲンの構造は不安定になってしまうため、ビタミンCも意識的に摂取しましょう。
多く含む食べ物 | アセロラ、キウイ、オレンジ類など各種フルーツ、ピーマン、ほうれん草、小松菜など各種野菜 |
4. シリカ
シリカ(ケイ素)とは、体内に必要なミネラルの一つ。体内で合成できないとされ、食事から摂取することが必要です。
シリカについてはまだ必要量や効果が明確でない部分も多いですが(※5)、髪や肌細胞、骨に存在することから、それらの形成や維持に関わるだろうとされています。
髪にも、ケラチンやコラーゲンなどのたんぱく質の結束を強くする役割としてケイ素が含まれているため、気になる方はシリカ入りを歌ったミネラルウォーターを活用してみるとよいでしょう。
多く含む食べ物 | 玄米、じゃがいも、とうもろこし、海藻類、シリカ入りのミネラルウォーター |

5. 鉄
丈夫なコラーゲン作りには鉄分の摂取も必要です(※4)。
鉄は体内の各所で使われています。
不足するとより生命維持に必要な箇所で優先的に利用され、艶やかで丈夫な肌や髪の形成は後回しになってしまうため、薄毛や脱毛の防止のためにも意識しましょう。
多く含む食べ物 | レバー、牛肉の赤身、ほうれん草、プルーン |
鉄分補給には、お湯を沸かすときにヤカンや電気ケトルに鉄玉を入れておくのがおすすめ!
6. 亜鉛
亜鉛もミネラルの1種で、体内組織の各所に存在します。
髪においては、髪の大部分を占めるたんぱく質「ケラチン」の生成に欠かせない成分。
さらに毛母細胞(毛母細胞の細胞分裂の繰り返しが毛髪の成長につながる)の増殖に関与しており(※6)、薄毛や脱毛が気になる方は亜鉛不足になっていないか意識してみるのがおすすめです。
男性脱毛症(AGA)の防止や改善にも寄与するとされています(※6)。
多く含む食べ物 | 牡蠣、ホタテ、牛肩ロース、牛もも肉、ナッツ類 |
7. ビタミンB群
ビタミンB群は体内においてさまざまな役割がありますが、とくにエネルギー代謝と細胞産生に関与している点が大きな役割です(※7)。
ビタミンB群が不足し体内でのエネルギー産生がうまくいかなかったり、細胞産生がうまくいかないことは、肌細胞のターンオーバーを遅延させたり、質のよい細胞産生とならない可能性があります。
そのためビタミンB群の不足で頭皮の健康が損なわれることは、健康的な髪の育成へも悪影響。
薄毛や脱毛が気になる方は、普段からビタミンB群を含む食品を摂取しているかチェックしてみましょう。
多く含む食べ物 | 豚肉、ほうれん草、マグロの赤身 |
薄毛に悪影響を及ぼす食べ物

一方で、薄毛を悪化させる可能性のある食品もあります。とくに、高カロリーで栄養価の低いジャンクフードは控えるよう心掛けましょう。
1. 油の多いジャンクフード
脂漏性脱毛を防ぐために、揚げ物といった脂ものばかり食べないように注意しましょう。
脂漏性脱毛症とは、皮脂の過剰分泌で皮膚がベタつく「脂漏性皮膚炎」が頭皮で起きた時に、頭皮環境が悪化して脱毛してしまう状態です。
脂質を摂取する際は、良質な脂質を含んだ食品(オリーブオイルやサーモンなど)を食べるようにしましょう。
2. 過剰な飲酒
過度なアルコール摂取は薄毛や脱毛の原因の1つ。
酒を多量に飲むと分解しきれずに生じたアセトアルデヒドという物質が体内を巡ります。
アセトアルデヒドは薄毛、脱毛、AGAの原因となるジヒドロテストステロンという男性ホルモンを増加させる可能性があり、注意が必要です。
アルコールの分解がどの程度でしきれなくなるかや分解速度は、人によって異なります。
例えばアルコールを飲んでから顔や体の赤みがしばらく引きそうになかったり、飲んだ翌日の朝に身体が重だるいような感覚があれば、それはすでにアルコール分解が追いついていない量を飲んでいるといえるでしょう。
3. 喫煙
タバコは食べ物ではありませんが、ここでは体に取り入れるものの1つとして紹介します。
喫煙は薄毛、脱毛、禿げを防ぎたいもしくは改善したい人にとって大敵!
喫煙がAGAの原因となる男性ホルモン「ジヒドロテストステロン」を増加させる、という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。
実際ハーバード大学での研究結果で、喫煙者ではジヒドロテストステロンの数値が14%非喫煙者と比較し高いという結果が出ています(※8)。
薄毛や脱毛予防/改善に必要!食事以外のこと

薄毛や脱毛、禿げを予防するには、食事以外のことにも気をつけましょう。
- できるだけ規則正しい生活習慣
- ストレスの軽減
- 適度な運動
- 頭皮をよく洗う、頭皮マッサージをする
- 整髪剤をつける人は、整髪剤をしっかり落とせているか意識したヘアケア
- 薄毛やAGA用のシャンプーを選ぶ
規則正しい生活習慣や運動をすること、ストレスを軽減することはいうまでもありません。
忙しい社会人生活でなかなか難しいこともあると思いますが、できる限り健康的な生活を送るようにしましょう。
楽しく、健やかな気持ちで実施するためには、健康的な生活をできるように簡単なマイルールを設置して少しずつ変えていくのがおすすめです。
また、適切なヘアケアも重要です。適切なシャンプーを選びや頭皮マッサージも薄毛対策の基本といえます。
本気の薄毛対策なら専門医へ相談がやっぱりいい!

薄毛対策をよりしっかりと行いたいなら、専門医へ相談し治療や薬を試すのがおすすめです。
薄毛の原因は人それぞれ。
医療機関で相談することで自分の薄毛の原因を知ることができ、それに合った治療を行うことはより確実な薄毛対策といえます。
まとめ

本記事では薄毛や脱毛、禿げ予防や改善で意識したい食べ物を紹介しました。
薄毛に悩む多くの人にとって、食事は大きな影響を及ぼす要素です。
タンパク質や鉄、亜鉛、ビタミンB群など、健康な髪を育てるために必要な栄養素をバランスよく摂取しましょう。
また、あまり気にしすぎるのもストレスとなりよくありません。周りは案外気にしていないのも事実。ぜひ、気楽な気持ちでいることも大切にしてください。
【参考文献】
- ※1:Kao|髪の構造 髪の知識
- ※2:山野美容芸術短期大学|毛髪の強さの秘密(シスチン結合)
- ※3:PR TIMES|毛髪に多く含まれている「シスチン」が毛母細胞の増殖に関与している
- ※4:大正製薬|丈夫なコラーゲンをつくるために! ビタミンCと鉄分も意識して摂ろう
- ※5:国民生活センター|シリカやケイ素を摂取できるとうたった飲料、健康食品等に関する調査
- ※6:フィットクリニック|亜鉛が髪へもたらす効果とは?おすすめのサプリメントもご紹介!
- ※7:チョコラBB|ビタミンB2のおはなし
- ※8:NIH|The relation of smoking, age, relative weight, and dietary intake to serum adrenal steroids, sex hormones, and sex hormone-binding globulin in middle-aged men